■日本の財政状況と私たち 〜 今後日本は、どうなっていくの? 〜  その9

前回のレポートからかなり間が空きまして申し訳ありません。

 このところ、2003年度末の財政に関する記事が、新聞に多く書かれています。また、財務省のホームページでもデータが新しくなり、今後のポイントが見えてきます。今回はこの最新データでもう一度財政問題の基本的な部分を検証してみたいと思います。

●日本の借金900兆円

まず、この国には2003年度末でいったいどれだけの借金があるのでしょうか。

 国債と借入金、政府短期証券(FB)を合計した国の債務残高は、約703兆円に達しています。

 さらに地方の借金(地方債)約200兆円が加わると、表向きの借金だけで約900兆円はあることになります。これは、国民一人当たり約700万円にあたり、4人家族の一家は2800万円の借金を背負っている計算になります。

 当然、この900兆円には利息がついてきます。今まではほとんど1%未満に近い金利で何とか保ってきたのですが、このところ世界的な金利上昇局面に入ってきており、日本だけが最低金利を継続することは不可能です。

 昨年5月末に0.53%だった新発国債(10年物)の利回りは、今年の6月17日には1.94%と約3.7倍に達してしまいました。当然、今後は利払いが大幅に増えていくことになります。

 さらに大きな問題は、金利が上昇すると国債や地方債などの債券の価格が下落することです。(以前にも書きましたね。)

●国債発行額

 国債や地方債は、主に金融機関が購入してきました。国債に関して言えば、郵政公社が約140兆円(2004年3月末)、銀行が約108兆円(2004年5月末)、さらに日銀や保険会社、年金基金等の保有を含め金融機関全体では、400兆円を超える保有残高となっています。

 しかもこの多くが超低金利(国債価格の高い)国債です。つまり、今後の金利上昇により国債価格が下落すると金融機関は大量の含み損を抱えることが明白になっています。これが個人ならば償還まで待てば問題ないかもしれませんが金融機関には決算があり、ここで資産の劣化が表面化すれば、即金融危機に繋がることになります。

 このように発行済の国債だけでも大きな問題を含んでいますが、問題はそれだけではありません。最大の問題は、今後も引き続き大量の国債を発行し続けなければならないことです。

 下の図をご覧ください。赤いグラフは、毎年の国の支出(歳出)をあらわしています。それに対し、青いグラフは、毎年の国の収入をあらわしています。支出に対し、収入が全く足りないことがわかります。その差額を新発国債の発行で賄っています。この状態では、当分新発国債の大量発行が続くことは間違いありません。財務省の試算でもこの数年、発行額はさらに増え続けます。ご興味のある方は、財務省のホームページに詳しいデータがありますのでじっくりとご覧ください。

●そこにある危機?

 しかし、国債の発行は必ずしも新発国債ばかりではありません。というより新発国債は一部で、圧倒的に借換債が多く発行されます。今年度も新発国債の発行予定は、36兆5900億円に対し、借換債は、84兆4507億円の予定です。したがって、国債の今年度の発行総額は、実は約120兆円にまで達するのです。(月10兆円ですね)

 さて、問題はここにあります。毎月10兆円発行し消化しなければならない国債ですが、金利上昇局面では購入すれば即価格下落が起きますので、購入する側としては金利が上昇した後、購入したいと思うのは当然です。ということは、この国債は、金利上昇局面では売れ残ってしまう可能性が高いということになります。つまり、購入側がこれなら購入してもいいと思う利回りまで金利が上昇してしまうということであり、その時に国債を保有していれば価格が大暴落していることになります。

  もちろん、国は半強制的な引き受け制度で国債を発行しても消化することはできますが、購入させられた側は下落がわかっている国債であれば、すぐに売却しようとするのは当然です。この繰り返しが起きれば、金利上昇=国債価格の下落のスパイラルに陥ることになります。このような状況になれば、金融危機はもちろん、強烈な金利上昇が起き、借入金のある企業も倒産し、国は一気に緊急事態に陥ってしまいます。(これは疑いなく有事ですね。そう言えば有事立法が・・・ )
 こうした危機が、目前に迫っていることは間違いないのではないでしょうか。

浅野 浩
asano@progress-international.com