■日本の財政状況と私たち 〜 今後日本は、どうなっていくの? 〜  その10

ついにこのセミナーも10回目になりました。

このところの新聞記事に来年度予算の概算要求の一般会計の額が出てきています。それによりますと2005年度予算の概算要求の一般会計見込み額は、今年度当初予算より約3兆4千億円膨らみ85兆5200億円となりました。

 財務省は年末の予算編成に向け、この見込み額をさらに3兆円程度削り込む構えですが、大増税でもしない限り、来年度も新規国債は30兆円台後半の大量発行が続く見通しで、借金依存体質からの脱却メドは全く見えてきません。

●増える国債費

 来年度の一般会計見込み額の内訳で、最も増えたのは国債の元利払いに充てる国債費です。今年度の概算要求では2.5%だった想定金利を2.7%に引き上げたため、国債費は2兆6700億円増えることになりました。

 たった0.2%の想定金利の引き上げですが、元の国債残高が膨大なためすぐに数兆円規模の増額になってしまいます。この額を見ていただいても今後長期金利が大幅に上昇していけば、たいへんなこと(予算が組めない等)になってくることがお分かりいただけるのではないでしょうか。

 また歳出を何とか絞り込み今年度予算の82兆円近くにしたとしても、歳入面では「経済が良くなっても国の税収は40兆円台半ばが限界」(幹部)とみられています。このことから、税収不足を補う新規国債の発行は、今年度の36.6兆円に引き続き、来年度も30兆円台後半の大量発行が避けられそうにないということになります。「一刻も早く増税しないと、国家財政がもたない。」と財務省内では大増税への声が急速に高まってくることは間違いありません。

 さらに問題として浮かび上がるのが来年度の国債発行額です。財務省が要求する来年度の国債発行額は、借換債が104兆681億円、新発債が39兆3000億円となっています。つまり、国債の発行額がこのままでいくと約143兆円にまで達するということです。今年度の発行額、約120兆円と比較すると約23兆円も増えることになります。また、月平均に換算しますと約12兆円の国債を毎月消化していかなければならない計算になります。

 想定金利が上がり国債の利払い費の額が大きく膨らだけでなく、発行される国債の額(元本)も大幅に増えるということです。いったいどこまでこの額が膨らんでいくのでしょうか。

●我が国の財政を家計に例えたら

 以下の表は、昨年まで財務省のホームページに記載されていた「わが国の財政を家計に例えたら」の表を今年度版として計算したものです。(ホームページには、わかりにくくなった表が記載されていますが)

 最初のセミナーでも書きましたので重複しますが、データが新しくなっていますので、もう一度確認の意味でご覧いただきたいと思います。

簡単に要約すれば・・・

 日本の今年度の財政を家計に例えますと、年収646万円、月収53万円の家庭が、田舎の仕送りとローンの支払いで40万円必要となり、実際に使えるお金が13万円にも関わらず、毎月56万円の生活をしている状態だということです。したがって毎月約43万円不足となり、この不足分を毎月ローンを借りて賄い、その残高が7776万円にまで達しているということです。

 しかもこの表は、ローンの残高を「長期債務残高」だけで見ています。現実には、国の借金は700兆円を超えています。したがって、家計に例えた場合のローン残高は、約1億円という計算になると思います。

 通常であれば、どのように考えても立て直せないですね。

 日本の財政に戻りますと、来年度の財政はさらに悪化するということになります。いったいどのように立て直していくのでしょうか。

本当に考えられない危険な事態に刻々と近づきつつあるのではないでしょうか。



浅野 浩
asano@progress-international.com