■日本の財政状況と私たち 〜 今後日本は、どうなっていくの? 〜  その11

 今回は、最初に日本の報道について書いてみたいと思います。

 これまでこのセミナーで日本の財政について10回書いてきました。お読みいただいた方は、日本の財政はこのままではどうしようもないということがお分かりいただけていると思います。

 私は、この原稿を書くにあたり、ほとんど新聞報道やインターネットからのデータを基にしています。つまり、一般に公開されているデータを見ていくだけで、日本の財政はほとんど再建不可能になっていることが理解できるということです。

 しかし、日本の報道機関でこのことを真剣にとりあげているところがあるでしょうか。逆に何故これほど重要な問題を大きく報道し、国民に理解できるように解説しないのでしょうか。

●外国人の目

 先日、或るCS放送の番組で外国特派員の人たちばかりでの討論会があり興味深く見たのですが、その中でロシアの特派員が「日本の新聞の報道は、ソ連時代の共産党の新聞にそっくりだ」と言っていたことです。つまり、いろいろな事件や現象に対し本質的な深堀りはせず、政府の発表をそのまま記事にしているだけだということです。まるで戦時中の大本営発表と同じだということです。

 しかもこれが日本人の記者からの発言ではなく、外国の特派員の発言であることに特に注意する必要があると思います。

 日本国民は、日本には言論の自由があり、どんなことでも隠さず報道されているかのように思っていますが、実態は全くそうではないということです。しかし、日本人は情報を与えられることに慣らされてしまい、自分から真実を追究していく姿勢がなくなってきています。

 私たちが、ごく当たり前と思って見ていることが実は外国人の目にはこのように写っているということです。

●日本国の財政問題

 さて、日本の報道はこのように物事を深く追求、分析しようとしませんが、最近では特に財政問題に関しての情報は驚くほど公開されてきています。逆に考えれば、今までなら隠していた情報をどうして今になってこれほど公開するようになってきたかということになりますが・・・。

 最近驚いたデータでは、国の貸借対照表が財務省のホームページに載っています。これは、新聞でも少し報道されましたので読まれた方も多いかと思います。

 内容的には(予想通りですが)、2002年度においてすでに国は200兆円以上の債務超過に陥っており、通常の会社であれば、破産状態ということになります。

財務省のホームページで公開されている情報がありますので是非ご覧ください。

財務省のホームページへ:「本表」のPDFファイル
財務省のホームページへ:「連結貸借対照表」のPDFファイル

●日本と欧州の消費税

 このような状況の中で谷垣財務大臣が、2007年度からの消費税率引き上げに関して言及しています。今では、国民の中にも「消費税が上がるのは仕方がない。」と言ったムードがあります。その中には日本は欧州に比べれば税率が低いので・・・という考えが一般的になってきていると思います。

 しかし、本当にそうなのでしょうか。或るホームページに非常にわかりやすく日本と欧州の消費税についての比較が書いてある文章がありましたので少し引用させていただきます。

  小泉首相などが唱える「ヨーロッパの税率は高い、日本は低い」という比較論は、消費税引き上げの口実に過ぎません。

 たとえば、イギリスでは、標準税率が17.5%ですが、食料品はほとんどゼロ税率、「子どもの成長には税金をかけない」と、15歳までは、衣服・文具・遊具など何でも非課税です。したがって電気、ガス代の税を払うだけで、日常生活は付加価値税(日本の消費税に相当)には、ほとんど関係なく送ることができるといわれています。さらに、教育費、医療費はゼロ、社会保障がととのっているので、国民は安心して生活できます。

 消費税収が国の歳入全体に占める比率をみると、日本の消費税5%のうち1%は地方消費税ですので、国税分4%だけで国の歳入全体の21.8%です。これに対して、イギリスでは付加価値税率17.5%で歳入全体のなかの比率は22.3%。イタリアは、税率20%で、比率は22.3%。スウェーデンは税率25%ですが比率は22.1%です。税率だけで比較するのはまちがいです。

 毎日、食べるものをはじめ、すべての商品、サービスに課税する日本の消費税の仕組みが、そのままでヨーロッパ並みの税率に上げられたら、国民の生活は成り立ちません。

●自分なりの検証を

 上記の文章を読むと、今のままでも充分欧州なみの消費税率だということがわかります。

 本来、日本の財政を解消するために最初にやらなければならないことは「財政の無駄遣い」をなくすことで、それもせず膨れ上がる借金のつけを国民に押し付けるようなやり方は、無茶苦茶なことではないでしょうか。しかも、そのための説明が全くのでたらめということでは話になりません。

 こうしたことを日本のマスコミは、もっと国民に本当のことを報道し、わかりやすく説明する必要があるのではないでしょうか。

 私たちも政府発表のまま流れてくるマスコミ報道に対して、そのまま信じるのではなく、一度自分なりに考えたり検証したりすることをしなくてはいけないのではないでしょうか。



浅野 浩
asano@progress-international.com