日本の財政状況と私たち 〜 今後日本は、どうなっていくの? 〜  その16
 今回は、「分散投資」について考えてみたいと思います。
最近、証券会社も投資信託や生保の変額個人年金を販売する場合、分散投資ということばをよく使いますので皆様もお聞きになられたこともあると思います。このセミナーでも「資産の分散」が必要だと何回も書いています。
 しかし、いろいろな方とお話していますとこの「分散」について誤解されていたり、資産の分散をしているようで分散になっていないケースも多く見かけます。

 これは以前、実際にあった話ですが、ある地方銀行で行員の方とお話しましたときに、その銀行が販売している投資信託の話になりました。ちょうど日本株式が下落して底を打っている時期だったのですが、その銀行が販売している投資信託が10種類ほどあり、ほとんどが元本割れをしているということでした。
 10種類もあってそんなはずはないでしょうと銘柄を聞いて驚いたのですが、殆どが日本株式に投資する投資信託だったのです。これでは、お客様がどんなに分散をしてポートフォリオを組んでも、やはり元本割れという話もわかります。
こんな話は論外ですが、これと似たようなことは多くあると思います。
本来の分散投資
 では、本来の分散投資とはどのように考えればいいのでしょうか。本来は金融商品以外にも資産分散の幅を広げなければなりませんが、今回は金融商品に限っての分散として考えてみます。

(1)通貨の分散(国の分散)
 最も大きなカテゴリーになりますが、特に日本の場合、この部分が大きなポイントになります。何回も書いていますように、もし日本に大きな変動が起きた場合、日本国内だけに資産を置いていたら日本の変動リスクに全てがさらされることになります。戦後の預金封鎖、ハイパーインフレなどの結果が、最もよくこの状態を表しています。

(2)投資期間の分散(明確化)
 資産を保有される方の目的に合わせて、期間を設定します。この場合、一つの目的であれば同一期間になることもあるかと思います。しかし、一般的には目的に応じて投資期間も違います。期間を長く運用できるのであれば、それだけリスクもとることができ、高利回りの運用が期待できます。逆に短い期間しかない場合には、利回りよりも安全性、換金性が重要になります。

(3)金融商品の種類の分散
 (1)・(2)の分散の後は、どのような種類のもので分散するかを考えます。これは、株式・債券といった区分です。最近では、金融デリバティブを駆使した商品も多く、いろいろなリスクヘッジも可能になっています。

(4)投資銘柄の分散
 最後にどのような銘柄で分散するかになります。問題は、投資商品が複雑になるにつれ、危険性の高いものの見分け方も難しくなってきていることです。特に(3)で書きました金融デリバティブを駆使したヘッジファンドなどは、相当なプロでも分析は難しく、表面的な話だけで投資されるのは一般の方にとって非常に危険性があることだと言えます。
安全でより良い運用をするには
 では、安全でより良い運用をする分散投資には、具体的にはどのような方法があるのでしょうか。

 「分散投資」と言いましても、その方の保有する金融資産の額や年齢等によっても大きな違いがあります。1億円以上投資できる方と数百万円の方とでは、当然投資先、分散方法なども大きく違ってきます。

 1億円以上投資できる資産家の方は、スイスのプライベートバンク(以下、PBと書きます)をご利用いただくのがいいのではないでしょうか。世界中の金融商品で(ヘッジファンドなども組み合わせ)、いろいろな場面に対応できるポートフォリオを組むことが可能です。通貨の分散も当然ですが可能となります。

 PBは名前のとおり銀行ですが、日本にある一般的な銀行と違い、貸付業務はしていません。つまり、預かり資産の運用に特化した銀行であり、一般の銀行のように貸付の失敗による破綻はありえないため、非常に安全性の高い銀行だと言えます。
 日本でもプライベートバンキングという名前でPBに似たような業務をしている銀行もありますが、基本的に質が全く違います。
 PBまでは・・・、という方につきましては、できる限りで海外への分散をお勧めしますが、今までのセミナーでも書いてまいりましたように基本的には米国で米ドルでの分散になると思います。
 まず、海外での銀行口座の開設、安全性の高い米国生保の個人年金や銀行預金への資金移動になるかと思います。しかし、最近では日本人の受け入れが厳しくなっており、こうした対策がなかなかできない状況になりつつあります。
日本での対応
 最後に海外はどうしても嫌だという方につきましては、日本での対応になりますが、通貨分散の商品としては、外資系生保の米ドル建て個人年金や証券会社の米ドルMMF等がいいのではないでしょうか。
 円安ではないかと言われる方もありますが、その分米ドルの金利も上昇してきており、特に長期投資可能な資金につきましては、まずますの金利を長期間確定できる運用が可能となってきています。

 ただ、このような日本国内の金融機関では、例え米ドル建ての金融商品と言えども、もし日本に大きな変動があった場合、それには対応できない可能性もあるということをお忘れにならないでいただければと思います。

浅野 浩
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