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「上島会計事務所便り」
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■日本の財政状況と私たち 〜 今後日本は、どうなっていくの? 〜 その4
今まで3回のセミナーで日本の財政状況がいかに悲惨なものであるかがご理解いただけたと思います。
今回は、株価や為替について現在の状況をどのようにとらえるべきかを書いてみたいと思います。
少し株価が戻ってきており、日本経済の復活が言われ始めていますが、本当に楽観的に考えていいのでしょうか。
●株価が上がるとは?
まず、株価が上がるということは、何を意味するのでしょう。
単純に考えれば日本経済が良くなり、景気も良くなっているということを意味します。しかし、日本の株価は決して日本経済単独で動くものではありません。世界情勢との絡みもあれば、政治的な意図による株価の引き上げもあります。また、株価が上がることには、良いことばかりでなく、新たな問題も発生します。
それでは今回の株価上昇は、どのように考えればいいのでしょうか。
一般的に言われているのは、企業の業績、特に輸出企業の業績回復による株価上昇です。確かにいろいろなデータをみれば数値が良くなっていることは間違いありません。しかし、このことで日本の経済状況が良くなっていると判断するのは危険です。企業業績が回復したと言っても、決して景気が良くなっているわけではなく、リストラ効果による収益の回復が大きな要素です。
●為替介入
また、今回の株価上昇に大きな影響を与えているのは「円売りドル買い」の為替介入です。ご存知のようにこのところ大幅な円高傾向にあります。日本経済を引っ張っているのは輸出企業です。円高になればその業績が厳しくなりますので、日本の景気にマイナスになるということで為替介入をしているわけです。
この介入額が今年は半端ではありません。年初からの介入額が13兆4000億円を超え、特に9月の介入額は、一ヶ月間では過去最大の4兆4500億円に達しました。
では、なぜ為替介入がなされると株価上昇になるのでしょうか。
為替介入と株価上昇
1)「円売りドル買い」で購入したドルで米国債を購入することになります。
2) 米国債が大量に買われると米国の債券価格が上昇し、長期金利が低下します。
3) 米国では、金利の低い債券を売り、その資金が株式に向かい株価が上昇します。
4) 米国の株高により、日本株に割安感が出てきます。
5) 米国の資金が日本株に向かい株価が上昇します。
●政治問題と株価
報道されていますように日本株を購入しているのは、主にヘッジファンドを含む外国人投資家です。要は、日銀の為替介入により資金を得た米国の投資家が、日本株を購入しているという構図です。もっと約せば、「日銀が資金を出して日本の株価を引き上げている」ということだと言えます。
次に政治的な状況として、日本では自民党の総裁選や総選挙を控えていました。国際的には、イラク戦争で米英両国が苦境に陥っているという状況があります。これを見ると日本と米国との間にいろいろな相談があり、お互いの政治的立場を有利にするための意図が働いてもおかしくない状況がありました。
日本では為替介入による株価対策をすることを米国が了承する。そのかわり米国ではブッシュ政権がイラク問題で苦境に陥っているので、日本も「自衛隊のイラク派遣」などで協力をするといったことです。
結果、日本では為替介入による株価対策が功を奏し、見事に景気回復感を演出できました。しかし、イラク問題では日本は「自衛隊のイラク派遣」などの具体的な貢献(?)は出来ず、結局、米国によって日本の為替介入をけん制され「急激な円高」という事態に追い込まれたということです。
●身近な動き
このような考え方もあるということで、それでは私たちの身近では、いったいどのような動きがあるのでしょうか。
この株高により、一番活気づくのが証券会社です。皆様の中にも証券会社からここぞとばかり株式の購入を勧められている方も多いのではないかと思います。また、銀行も円高の流れを受けてドル預金を勧めてきています。
長期的に見ればもっと深刻な問題を含んでいますが、目の前の現実だけでもこのような状況が起きています。しかし、注意しなくてはならないのは、このような投資は、投機に近いということです。決して「資産運用」だと考えないで下さい。(もちろん、投機が悪いわけではありませんので、それなりのリスクをご理解されている方は問題ありません。)
●資産運用の考え方
ここで資産運用の基本的な考え方を簡単に書いてみたいと思います。
まず、お金と一言でいいましても、いろいろな性格があります。個人資産の場合、大きく分けて以下の3種類に分けられます。
(1)生活資金
(2)レジャーなどの楽しみに使う資金
(3)老後資金や教育資金、相続資金などの長期で貯めていく資金
●資産ごとの考え方
まず、最低限必要なのは、言うまでもなく(1)の生活資金です。これは、説明の必要もないかと思いますが、近々必ず使うことになる資金です。
問題は、(2)と(3)です。この2つの資金が、日本人は同じ財布に入ってしまっています。しかし、性格は大きく違います。ここが、問題です。
先ほどの話に戻れば、証券会社から勧められる「短期の株式投資」の場合は、(2)に入ると考えられます。同じようなものに短期の為替取引や商品取引、パチンコ、競馬、宝くじなどもここに入ります。したがって、銀行が勧めるドル定期も「円が高いから、今買えば儲かりますよ」という話は、短期の為替取引になりますので(2)に入ります。
しかし、同じ「株式投資」でも長期保有する予定で買うのは(3)に入ります。また、長期間保有する予定の金(きん)や絵画なども(3)に入ります。個人年金や積立型の金融商品、終身保険なども、当然ここに入ります。
その資金が、どのような性格かで運用の仕方も変わってきます。
(1)の生活資金は、短期ですぐ出ていくお金であり、足りなくても困りますので現金で持っているか、預けるにしても普通預金やMMFなどのすぐに下ろせるもので、ほとんど割れる心配のないものにしておかなければなりません。
(2)のレジャーなどの楽しみに使う資金については、どのように使われてもかまいません。ただ、足りなくなっても(1)や(3)の資金から絶対に持ってこないことが大切です。
問題は、(3)の資金です。教育資金や老後資金、相続資金など将来必ず必要となるため、長期でためていく資金です。
戦後からつい7、8年ほど前までは、日本ではこの資金については何も考えず、預貯金にしておけば全く問題ありませんでした。また、長期でも比較的短期でも株式に投資したり、不動産に投資している方は、面白いように「儲かった」と思います。
しかし、バブル崩壊の影響が大きく出始め、金融機関が破たんする時代になり、今までと同じような考えは通用しなくなりました。
この(3)の資金が、「一番考えなければならない資金」なのです。
最低限言えることは、この資金は、こつこつと長期間にわたって造っていく資金です。したがって、長期間には少しの利回りの差も大きな差となって現れてきますし、インフレなど世の中の変化も起こります。安全だと思っていたものがそうでなくなる場合もあります。(日本の金融機関を見ていればお分かりいただけますね。)うまく対応していくためには、結局、専門家のアドバイスを受けることが不可欠だと思います。
●金融資産の分散
政治・経済ともに混迷している現在、資産をきちっと守るためには自分自身も勉強し、少なくともこの資金は何のためのものかを考え、間違いのない投資をしていただくことが大切です。
今後、日本の財政、経済の情勢とともに、この(3)の資金についても書いていきたいと思います。
筆者:Progress International Consulting Co.,Ltd.
浅野 浩
asano@progress-international.com
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