■日本の財政状況と私たち 〜 今後日本は、どうなっていくの? 〜  その7
 ついに自衛隊のイラク派遣が行われ、一方ではイラクに大量破壊兵器はなかったのではないかという報告がどんどん出てきています。米国の大統領選挙への影響もかなりあることから今後の政治の変動がいろいろ考えられます。
 国内の経済は、一部勝ち組企業の景気は回復しているようですが、金融機関の改革はあまり進んでおらず、特に中小金融機関の問題はこれから噴出するものと思われます。
  この中で一貫して変わっていないのが日本の財政状況です。最近も円高を阻止するため、借金による際限のない為替介入を実施しています。
●G7は?
 2月7日には七カ国(G 7 )財務相・中央銀行総裁会議が行われましたが、為替については日欧に配慮は示されたとの報道もありますが、 会議後、スノー 米財務長官は「通貨の価値を決めるのは開かれた競争市場だ」と指摘、「人為的に水準が操られている通貨は経済のファンダメンタルズを反映していない」と語り、明言は避けましたが 日本の為替介入に対する牽制もあり、 大きな流れは円安に向かうどころか、もう少し円高ドル安に向かうのではないかと考えられます。
   現実的には、米国の大統領選挙を控え、米国経済の好調さを強調することが現政権存続のためには必要であり、そのために米国政府は、どんなことをしてもドル安の方向にもっていかざるを得ません。
 これに対し、日本がいくら円売りドル買いの為替介入をしても結局は米国債をどんどん買い増しすることになるだけです。
 今までは、介入することにより日本の株価も上昇していたのですが、最近ではそれも効果がなくなりました。したがって単純に言えば、日本政府は、どんどん借金をして米国債を買い、米国に資金供給をしているということになるのです。
●金の保有?

 このような状況の中で「私たちは資産を何で保有し、保全していったらいいのか。」というご意見をよく伺います。この問題については、セミナーの中で以前にも書いています。
  しかし、最近では金(ゴールド)を保有したらどうかというご意見をよくお聞きしますので、少し金(ゴールド)について書いてみたいと思います

  まず、金(ゴールド)は、世界でどれくらいの量があり、国としては何処が保有しているのでしょうか。
  右の表は、2002年末の保有上位10カ国の一覧です。ご覧いただいてわかりますように、現在、米国が圧倒的に多くの金(ゴールド)を保有しています。
  日本人の場合、米国が不安で金(ゴールド)の保有と考えますが、もし米国の不安が本当になり、金(ゴールド)の一 部売却を検討したら一体どうなるのでしょう。

●金の価格は?

 しかも先日は、米連邦準備理事会(FRB)が、現行の超低金利を「かなりの期間」継続するとの表現を連邦公開市場委員会(FOMC)の声明から削除したのがきっかけで金利上昇観測が台頭し、資金流入に急ブレーキがかかり 金価格が急落しました。 現在、米国の金利は最低ラインにあり、いつになるかはともかく今後上昇してくるのは間違ありません。そのときには、金価格が下落していくことになります。
  また、金(ゴールド)の価格は、円建てで見ればドルにかなり連動しています。

  上のグラフをご覧いただければ、1980年以降、円建てでの 金 (ゴールド)の価格は、米ドルの動きと非常によく似ていることがおわかりいただけると思います。
 また、日本人が米ドルの不安で大量に 金 (ゴールド)を購入した場合、米ドルベースでの 金 (ゴールド)の価格は上昇しますが、反面米ドルが下落し円高になるため、円ベースで考えた場合、なんにもならないということになります。(ご理解いただけますか?)
●金への投資はだいじょうぶ?
 つまり、日本人が 金 (ゴールド)に投資する場合、米ドルの為替取引をしているのと同じような形になり、であれば確実に利回りのあるドル建ての金融商品の方が堅いのではないかということになります。
  また、 金 (ゴールド)の場合、現物を購入されればその保管にも気を使うことになります。
 こうしたリスクを考えてみると一見安心に見える 金 (ゴールド)ですが、保有されるのはかなり「余裕資金をお持ちの方」で、「金融資産については国と通貨を分散された後」でいいのではないかと思います。

筆者:Progress International Consulting Co.,Ltd.
浅野 浩
asano@progress-international.com