■日本の財政状況と私たち 〜 今後日本は、どうなっていくの? 〜  その13

 皆様もお気づきと思いますが、このところ財務省が「日本の財政が危ない」という財政赤字の深刻さをアピールする統計、試算を次々と発表してきています。

 2005年度末には、538兆円の国債残高も、2008年度には625兆円、2018年度末には917兆円に達するとする数字なども堂々と出てきたりしています。(財務省「国債整理基金の資金繰り状況等についての仮定計算」より)

 また、テレビのニュースでも財政破綻ということばが使われ、報道ステーションのような一般的な番組でも特集を組んだりされました。(実際の内容は、全く大したことのないものでしたが・・・)

 今回、このような発表をしてきた背景には、「増税や社会保障費削減やむなし」の世論づくりの狙いがあると言われています。しかし、このような発表をしなくても現実的に世論は「最早ある程度の増税はやむを得ない」という状況になってきており、小泉首相がやめた後には、消費税アップ等の増税があるだろうということは常識になりつつあります。

 では、「増税や社会保障費削減」により、日本の財政は健全になっていくのでしょうか。また、我々の生活は、どの程度の痛みで済むのでしょうか。

財務省の発表

 それには、日本の財政状況が、今回「財務省の発表」としてマスコミが報道しているとおりなのかという問題があります。決して間違いとは言いませんが、どう見ても的確に報道しているとは思えません。

 では、現実に「日本の借金」はいくらあるのか、もう一度検証してみましょう。(今まで何度も書いていますが・・・)

 まず、国の借金が、約813兆円。(国の借金は、国債だけではありません。)

 さらに、地方の借金が、約204兆円。ここから国と地方の重複分33兆円を差し引くと、これだけで984兆円あることになります。(参照 国及び地方の長期債務残高

 さらに以前にも書きましたが、隠れ借金もあります。これは特殊法人などの債務保証をしている分や年金の債務などです。問題なのは、この借金の正確な額がわからないことです。

 この隠れ借金まで入れると日本の借金は、1300兆円とも1400兆円とも言われています。(どこかで聞いたような数字ですね。そう、国民の金融資産の総額です。しかし、実際の現金や預貯金等は、750兆円程度だと言われています。)
 借金がいくらあっても返済可能であれば問題はないわけですが、果たして今後まともな返済が可能なのでしょうか。
財務省の試算

 ここに2005年度以降の歳出・歳入の財務省の試算があります。興味のある方は、コピーをして一度じっくりとご覧いただきたいのですが、ここでは今年度以降さらに財政が厳しくなる実態が公表されています。

 ここでは、税収などの「収入等」が、順調に伸びていくという仮定で計算されていますが、それでも「歳出」の増加に追いつかず、収入と歳出と「差額」がどんどんと増えていく実態を示しています。この「差額」=国債発行額となります。つまり、今後、国債発行を減らしていくわけではなく、さらに増発せざるをえなくなるということです。

 もし、ここで消費税率アップなどの増税をすれば、確かに理屈の上では「収入」が増え、国債発行額も抑えられるかのように見えますが、大幅な増税では国民の消費が減り、不景気になり、逆に税収減ということも考えられます。

 また、社会保障費削減等の歳出を大幅にカットすることになれば、国民生活に大きな支障をきたすのは間違いありません。いくらマスコミで大々的に宣伝しても確実に選挙では票に響きますので、実際には、それほど大幅な改革はできないということになります。
資産税課税?

 このように考えますと、最早ここまで借金が膨らんでしまっては表向きの改革では打つ手がないというのが正直なところではないでしょうか。

 最近では、社団法人日本経済調査協議会という団体が出している『財政破綻の克服に向けて』という提言に、ついに資産税課税の内容が盛り込まれてきています。

 全文がPDFファイルでダウンロードできますのでお時間のある方は読んでいただくと良いのですが、56ページにも及ぶ膨大な量ですのでなかなか難しいかと思います。資産税課税につきましては、この中の「第4章 デフレ脱却へのマクロ政策」の「(6)政府が保証する金融資産に対する課税」(P26)に出ていますので興味のある方はご参照ください。

 最後に、ご覧になられた方も多いと思いますが「日本の借金時計」
というページがありますので、一度ご覧いただくと良いかと思います。

浅野 浩
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