■日本の財政状況と私たち 〜 今後日本は、どうなっていくの? 〜  その14

 今、この国では、目の前にある特に大きなリスクとして以下の3つが考えられます。

1. 地理的リスク
2. 政治的リスク
3. 財政的リスク

 これらのリスクがあることは、皆様もよくご存知のことと思います。しかし、それに対しての対応ができているかと考えるとそれほどできていないのが正直なところではないでしょうか。
今回は、最近頻繁に感じることの多い「大きなリスク」が、私たちの資産に及ぼす影響について書いてみたいと思います。

1. 地理的リスク
 これは、言うまでもなく地震や火山の噴火といった日本列島自体の抱えているリスクです。当然、皆様も感じておられると思いますが、たった今、震度6強の地震が襲ってきても何の不思議もないのです。 家の耐震補強や保存食等の準備をされている方もみえるのではないでしょうか。しかし、これ以外にも対策をしなければならないことがあります。

 以下のページは、中央防災会議首都直下地震対策専門調査会の第15回の会議(2005年2月25日)で配布された資料(PDF)です。

 この資料の64ページにありますが、首都直下地震が最悪のタイミングで発生した場合、約112兆円の経済的損失が発生すると試算されています。
 こうした地震が発生し、巨大な経済損失が発生した場合、今の経済情勢がそのまま続くことは考えられません。当然、大きな変動があります。例えば、株価や円の大暴落といったことが起きる可能性は大きく、それに伴う経済の大混乱も避けられません。
  その時、現在の破滅的な財政状況にある日本は、どのような対応をとるのでしょうか。

2. 政治的リスク

 このリスクは、毎日のニュースでも報道されているとおり、中国問題、韓国問題、北朝鮮問題等、近隣諸国との問題だけでも山積みしています。
  特に中国との問題は、日本経済に多大な影響を及ぼします。最近の「好調」といわれる企業の多くが、中国への進出によって「好調」になり、「好調」さを維持しています。この経済を支えている根本が揺らぐ可能性さえあるのです。

また、米国との関係においては、ほとんど従属しているのではないかと思える外交で、米国にあるリスクが、日本にそれ以上のリスクとして跳ね返ってくるような状態です。

 また、国内の部分でも郵政民営化の問題ばかりが大きな政治課題として取り上げられていますが、根本的な問題は、日本の国に本当の意味での自由競争が確立していないところにあるのではないでしょうか。つまり、誰かの利権を守るための規制ばかりが目立つことがあまりにも多いということです。

 このような状況を変えられないところも政治的なリスクとして考えられます。

3. 財政的リスク

 この部分は、今まで何度も書いていますが、改めて復習する意味で財務省の資料をご覧いただければと思います。これからの図は、全て財務省のホームページからの引用です。

 下の図は、今年度末の国の借金の総額(見込)を示しています。 国債だけでなく、借入金等も含めると887兆円に達することがわかります。

クリックすると画像が大きくなります。

 次の図では、地方の債務残高が出ています。 今年度末見込で205兆円に達することがわかります。 前の図とこの図で「国の借金」と「地方の借金」の合計、つまり日本の借金総額は、1000兆円を超えていることがわかると思います。
 ただし、この金額には公的年金の積立不足や特殊法人等の債務、いわゆる「隠れ借金」は入っていません。

国及び地方の長期債残高(平成16年12月)
(単位:兆円)
(注)  
1. GNPは、16年度は実績見込み、17年度は政府見通し。
2. このほか17年度末の財政融資資金特別会計国債残高は144兆円程度。
3. 16,17年度の( )書きは翌年度借換のための前倒債限度額を除いた計数。

 さて、最後の図では、わかりやすく財政を家計にたとえた図をご覧下さい。
  以前にも同様の図をご覧いただいたことがありますが、今年度の財政状況が新たな図になって公開されています。
  詳しく説明しませんが、この図では借金の計算を公債残高538兆円で計算してあります。

我が国の財政を家計にたとえたら・・・

(家計の前提)
一世帯月収は、平成16年度厚生年金及び国民年金の財政再計算におけるモデルケースの月平均手取り収入等を参考に算出。他の項目は一世帯月収の国の財政・税外収入に対する比率により算出した。

 しかし、国と地方の借金総額は、1000兆円を超えます。つまり、ローン残高は約1億円と考えるのが正しいと思われます。
  一般家庭で1億円の借金があればどうなるか、考えてみれば簡単にお分かりいただけますね。

このような財務状況のところ(国)が発行する債券(国債)に銀行、郵政公社、生命保険会社等の金融機関は私たちのお金を投資しているのです。
  しかも、この債券は超低金利の債券です。世界は今後大きな金利上昇局面になると考えられます。したがって、日本国債には大きな金利上昇リスク(債券大暴落リスク)もあります。

 ここに資産を置いておくほどのリスクが、他にあるでしょうか。

資産保全

 以上のように日本には、私たちが通常考えている以上に大きなリスクが存在します。このような中で資産保全を考える場合、対策としては、まず国を分散すること、次に投資先を分散することだと考えます。もちろん、外国にもそれぞれのリスクがあり、何処が安全性が高いか、何処に投資すべきか、きちっと考えなければなりません。

 それにしても国内だけに資産を置いている方(外貨預金も含め)がほとんどだという状況には、日本という国は金融に関しては正確な情報もなく、ほとんど鎖国状態なのだということをつくづく感じます。


浅野 浩
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