■日本の財政状況と私たち 〜 今後日本は、どうなっていくの? 〜  その1
 このところ毎日のように新聞に日本の財政状況に関する記事が掲載されています。しかしながら、財政状況が悪いといっても私たちの普段の生活に直接目に見えて大きな変化が起こっているわけではありません。したがって多くの国民は、記事やニュースを他人ごとのように見たり聞き流したりしてしまいます。
 果たしてそれでいいのでしょうか。
 今回からシリーズで、具体例をあげながら、実際に日本の財政状況がどのような状況にあるのか、今後どのようなことが起こってくるのかをわかりやすく書いてみたいと思います。
 
●日本の財政状況
 ここに財務省がホームページ上で公開しているとてもわかりやすい資料があります。下の図は、日本の財政状況を一般家庭の家計に例えたものです。
  図の右側が家計の場合ですが、左側の国の財政状況と比較してご覧下さ い。
この図によりますと、日本の一世帯あたりの平均年収が、約661万円。これを月収にしますと55万1160円となります。(本来は、ここに税金がかかるのですが、今回税金は、省略します。)
 この約55万円の中から田舎の仕送り(=地方交付税に相当)を約21万円、ローン元利払(=国債費に相当)を約20万円支払います。残りの可処分所得は、13.5万円程度になり、健全な家庭はこれを一ヶ月の生活費とします。ところが、この一家は、家計費を57.8万円も使っており、44.2万円が不足しています。その分をローンで賄い、毎月その生活を繰り返した結果、ローンの残高が6571万円にもなってしまっているのです。普通は、こうなる前に自己破産してしまいますね。
 これを国に置き換えますと税収が約45兆円。そこから地方交付税を17.4兆円、国債費を16.8兆円支払うと残りは11兆円ほどになります。しかし、一般家庭の家計費に当たる一般歳出は47.6兆円あり年間36.4兆円が不足します。これを国債(公債金)で賄っているのです。その残高が、450兆円に達しようとしています。
 
●税収の10年分?
 上記の額は、税収の10年分に相当します。また、これを紙幣に換算すると1万円札で積み上げた場合、エベレスト山の約500倍というまさに天文学的な数字になります。
 またこの額は、世界の発展途上国の累積債務の合計が、約250兆円ということと比べても、いかに大きな数字かということがわかります。(下図参照)
1万円札を積み上げた場合の高さ4,500kmで富士山(3,776m)の1,200倍、エベレスト山(8,848m)の約500倍。
また、1000円札を積み上げて横に寝かせると、地球を1周した距離(約4万km)に匹敵する。
世界の開発途上国の債務は、現在、合計で約2.2兆ドル。1ドル=121円として約264兆円であり、我が国の国債残高の規模はこれを大きく上回る。
(出典):IMF World Economic Outlook(2002年9月)

 国の借金はこれだけではありません。その他いろいろ加えますと668兆円を超えています。さらにここに地方債が加わります。これが約200兆円あるといわれています。国と地方の重複分もありますが、800兆円超の借金があるものと思って間違いありません。
 また、これ以外に「隠れ借金」といわれるものも入れると約1300兆円に達するといわれています。
 この借金を返済していく財源は、税金と国の収入しかありません。
両者を足して約45兆円(2003年度予算額)程度、これではとても返せるものではありません。
 では、この国はどのようになっていくのでしょうか?
続きは、次回とさせていただきます。

(引用資料:財務省ホームページ

筆者:Progress International Consulting Co.,Ltd.
浅野 浩
asano@progress-international.com